ひとりデータ班のクローゼット

東京六大学野球近年のデータを中心に感じたことを書いていきます。

2018秋振り返り②ざっくり投手陣を振り返る

ごきげんよう、おざりょです。

さて、2018年秋季リーグを投手成績から振り返りましょう。

 まず各チームごとの投手成績です。

大学 試合数 防御率 完投
法政 13 2.65 2
早稲田 14 1.94 6
慶應 14 3.64 3
明治 14 2.76 6
立教 12 2.93 0
東大 11 6.10 2

だいぶスタッツを端折りました。チーム防御率トップは早大。絶対的エース小島和哉(4年・浦和学院千葉ロッテ3位)を中心にタレント揃いの投手陣は鉄壁でした。慶大は2試合目に大量失点する試合が多く、防御率はリーグ5位。完投数は小島擁する早大、森下暢仁(3年・大分商業)擁する明大と、絶対的エースが完投数を稼ぎました。

ここから試合内容にフォーカスした振り返り。

 

※面倒くさいので今後各大学を頭文字で表すことがあります。

大学 試合数 防御率 零封 1試合最多失点 U2 O5 最大点差逆転 1回最多失点
法政 13 2.65 2 9(K3)※延長12回 8 3

3(W2)

3(W3・8回等)
早稲田 14 1.94 4 6(H2)※延長11回 8 4 3(H3) 4(H3・8回)
慶應 14 3.64 1 8(H2・H3) 5 5 3(H3) 5(H3・3回)
明治 14 2.76 0 8(W3) 7 2 1 4(K3・5回)
立教 12 2.93 1 7(H2) 4 3 3(H2) 3(W1・5回等)
東大 11 6.10 0 12(M1) 2 7 3(K1等) 8(M1・4回)

東大の1試合最多失点は明大1回戦。三鍋秀悟(4年・川和)の3点本塁打で序盤は先行するも、4回外野のエラーから一気に8失点し逆転されました。

法大慶大の最多失点は壮絶な試合となった3回戦。慶大が3点を先行しながら3回に向山基生(4年・法政二NTT東日本内定)が満塁弾を放ち、延長戦では11回の表裏で2点ずつを取り合う激戦の末に慶大が長谷川晴哉(4年・八代)がサヨナラ打を放った試合でした。

さて、U2、O5とは慶大が2018年に掲げていた数値で、「2失点以内」「5得点以上」を意味し、この二つを達成できれば勝ちに近づくということだそうです。逆にO5、投手陣が5失点以上すると打線が活躍しても勝てるとは限らないという数値だと捉えてそれぞれ調べました。

U2の試合が多かったのは法大と早大早大は開幕の法大戦、最終早慶戦を除く全ての試合で驚異の8試合連続U2を達成しました。なお東大のU2はともに明大戦でした(2回戦、3回戦)。O5は意外にも明大が2回(慶大3回戦、早大3回戦)と最も少なかったです。U2も7回でリーグ3位と投手陣が仕事を果たしていたと再度確認できます。慶大はU2が多くなく、O5と同じと考えると成績は良くないですね。

「最大点差逆転」では投手陣の不安定さが表れると考えましたが、ほとんど変わりはなかったですね。明大だけ唯一大逆転されたケースがなかったです。投手力の高さと高くない得点力が組み合わさったものですね。

法早戦は2回戦、3回戦共に8回がビッグイニングとなりました。共に先発で好投の高田孝一(2年・平塚学園)と小島がつかまり、その後延長戦で敗戦を喫しています。早大にとってはこの一戦をとっておけば優勝だっただけに悔しい敗戦でした。

立大慶大も3点差を逆転されたのは法大戦。ここでも法大の打撃力が表れています。

東大は慶大1回戦明大1回戦ともに初回に3点本塁打で先行しながら早々に逆転を許してしまう展開でした。

1回最多失点も投手陣の脆さが出るかなと調べました。3失点だった法大、立大が最少。

立大が3失点した早大1回戦5回。エース田中誠也(3年・大阪桐蔭)が崩れこの回で降板。ケガが主な要因と思われますが、隠していた当時としては、1回戦で大エースが5回KOとショッキングな投球内容でした。法大は早大2回戦で8回と11回に3失点ずつしています。

早大慶大明大ともに最多イニング失点を喫したのは法大でした。

 

次に全体の細かいスタッツを見ていきましょう。

大学 試合数 防御率 被打率 出塁率 長打率 OPS WHIP K/9 B/9 K/BB LOB% BABIP FIP
法政 13 2.65 0.257 0.301 0.339 0.640 1.19 7.95 2.21 3.60 76.8% 0.324 2.55
早稲田 14 1.94 0.215 0.291 0.290 0.581 1.16 8.88 3.47 2.56 83.3% 0.283 2.84
慶應 14 3.64 0.256 0.317 0.362 0.679 1.27 6.07 3.00 2.02 74.0% 0.292 3.84
明治 14 2.76 0.213 0.270 0.297 0.567 1.04 8.86 2.55 3.47 73.6% 0.280 2.55
立教 12 2.93 0.250 0.321 0.309 0.630 1.30 6.62 3.61 1.84 73.6% 0.304 3.02
東大 11 6.10 0.309 0.410 0.428 0.838 1.90 4.26 6.29 0.68 62.4% 0.336 4.90

緑色はブービーを表しています。最下位は全部東大だったので。 

意外にも被打率が一番良いのは明大。法大は5位と防御率に比べるとよくありませんでした。

出塁率と被打率の乖離(被IsoD)を見ると早大は意外にも良くない数字でした。被打率(2位)に比べて与四球率が悪い(4位)ことが大きいようです。

被長打の面で慶大は悪い数字。被本塁打がリーグ断トツワーストの11本(2位が6本)なことが大きく尾を引きました。

セイバーのスタッツを見ていきましょう。各大学ごとのセイバースタッツは後々やっていこうと思います。

OPS(被出塁率+被長打率)は被打率の低さと被出塁率の低さでトップは明大でした。ブービーは被長打率が悪かった慶大でした。

WHIP(1イニングあたりに許したランナー)は明大が1.04と大きく差をつけ1位でした。

K/9(9イニングあたりの奪三振率)は早大が限りなく9に近い値でトップ。続いて差がなく明大が2位。春は9を超える奪三振率を誇った慶大が一気にブービーになってしまいました。

B/9(9イニングごとの与四死球率)は法大が1位。法大はここ数年与四死球率が低い傾向にあります。ブービーは立大。こちらも春は2位(2.97)だったものの数字を悪化させてしまいました。

K/BBはBB/9が優秀だった法大が1位。K/9、B/9ともに2位だった明大が2位でした。

LOB%残塁率を表す数値です。大きければランナーを返さなかったということ。ただ運に左右される数値であるため、大きければ"良い"というわけではありません。

このLOB%が一番大きかったのは早大。唯一の80%台と他に比べて高い数値です。エース小島だけでない投手陣全体の粘り強さが表れていると言っていいでしょう。ブービーは明大と立大でしたが、慶大も数値としてはほぼ変わりませんでした。

BABIPとはインプレー打率。ホームラン、三振を除いたグラウンドに飛んだ打球の打率です。一般的には3割程度に収束すると言われ、極端に高い低い場合は今後"揺り戻し"が来る可能性があります。また、内野守備にも大きく左右されます。

BABIP1位は明大。被打率も同じく低かったですね。ブービーは法大。連携で崩れる部分は多かったですが、エラーが少ない内野守備が自慢。よって秋季好調だった投手陣は来シーズンさらに防御率が良くなるかもしれません。

FIPは投手から見て運に左右されにくい三振や四死球から算出した、防御率に似せた数値です。

FIPトップは法大と明大でした。防御率1位だった早大はまさかの3位。ブービーは慶大でした。

 

続いて規定投球回到達投手の基本スタッツ。 

選手 大学 学年 高校 登板 先発 完投 完封 QS率 HQS率 先発時平均投球回 勝利 敗戦 防御率 奪三振
小島和哉 W 4 浦和学院 10 8 5 3 75.0% 62.5% 7.41 4 2 1.73 62
三浦銀二 H 1 福岡大大濠 8 8 2 1 50.0% 50.0% 6.21 3 1 1.99 43
竹田祐 M 1 履正社 7 4 0 0 50.0% 25.0% 5.92 0 1 2.25 23
髙橋佑樹 K 3 川越東 10 8 3 1 75.0% 62.5% 7.63 6 1 2.35 44
川端健斗 R 1 秀岳館 6 4 0 0 50.0% 50.0% 5.83 1 2 2.84 21
田中誠 R 3 大阪桐蔭 5 5 0 0 80.0% 60.0% 6.27 0 3 2.87 30
森下暢仁 M 3 大分商業 9 8 6 0 75.0% 50.0% 8.08 4 3 3.06 59
高田孝一 H 2 平塚学園 7 5 0 0 20.0% 0.0% 5.47 1 0 3.73 27
小林大雅 T 3 横浜翠嵐 9 6 1 0 50.0% 50.0% 6.00 0 5 5.56 18
有坂望 T 4 城北(東京) 7 5 1 0 20.0% 20.0% 5.00 0 5 7.43 13


慶大早大以外は2人が規定投球回に到達。

QS率が高かったのは立大・田中誠。春は3つ記録した完投はゼロでしたが、ケガにより少ない出番の中で安定した投球を披露しました。HQS率が高かったのは小島と髙橋佑の両左腕でした。

先発での平均投球回が多かったのは森下暢。11回完投などリーグトップの6完投でタフネスさを発揮しました。法大・高田は全5カードの2戦目で先発しましたが、QS率20%、先発平均投球回も5.47と十分な働きとはいえませんでした。一方で東大・小林大はHQS率50%。春のQS1度のみからQS率・HQS率は改善されましたが、春は1試合最大で4だった自責点が3試合で6を記録してしまい、小林大の課題である調子の差が顕著に表れる結果となりました。

最多勝はMVPに選ばれた髙橋佑。敗戦も通年で最終戦に喫した1つのみでした。小島は防御率奪三振の2冠。奪三振2位は森下暢でした。

 

 続いてさらに詳細なスタッツ。

投手 小島 三浦 竹田 髙橋佑 川端健 田中誠 森下暢 高田 小林大 有坂
試合数 10 8 7 10 6 5 9 7 9 7
防御率 1.73 1.99 2.25 2.35 2.84 2.87 3.06 3.73 5.56 7.43
被打率 0.219③ 0.231④ 0.263⑥ 0.209② 0.275⑦ 0.261⑤ 0.202① 0.296⑧ 0.308⑨ 0.340⑩
出塁率 0.301④ 0.263③ 0.318⑤ 0.249② 0.374⑧ 0.333⑥ 0.247① 0.341⑦ 0.393⑨ 0.421⑩
IsoD 0.081⑦ 0.032① 0.055⑤ 0.040② 0.099⑩ 0.073⑥ 0.045③ 0.046④ 0.085⑨ 0.082⑧
長打率 0.274① 0.313④ 0.323⑥ 0.277② 0.319⑤ 0.345⑦ 0.311③ 0.383⑧ 0.401⑨ 0.515⑩
IsoP 0.055② 0.082⑤ 0.061③ 0.068④ 0.044① 0.084⑦ 0.110⑨ 0.087⑥ 0.093⑧ 0.175⑩
OPS 0.575③ 0.576④ 0.641⑤ 0.526① 0.693⑦ 0.678⑥ 0.558② 0.724⑧ 0.794⑨ 0.936⑩
WHIP 1.18④ 1.01③ 1.21⑤ 0.95② 1.58⑧ 1.40⑦ 0.93① 1.37⑥ 1.81⑨ 1.91⑩
K/9 8.25② 7.79④ 7.39⑦ 6.09⑧ 7.46⑥ 8.62① 8.21③ 7.76⑤ 3.71⑩ 4.39⑨
B/9 3.72⑥ 1.45① 2.57④ 1.80② 5.33⑧ 3.73⑦ 1.95③ 2.59⑤ 5.36⑩ 5.40⑨
K/BB 2.21⑦ 5.38① 2.88⑤ 3.38③ 1.40⑧ 2.31⑥ 4.21② 3.00④ 0.69⑩ 0.81⑨
HR/9 0.27③ 0.72⑩ 0.00① 0.42⑦ 0.00① 0.29④ 0.70⑨ 0.29④ 0.41⑥ 0.68⑧
LOB% 84.2%② 87.8%① 79.4%③ 76.1%⑥ 77.5%④ 77.5%⑤ 67.9%⑦ 64.9%⑧ 64.3%⑨ 51.9%⑩
BABIP 0.287④ 0.281③ 0.342⑦ 0.243① 0.352⑧ 0.341⑥ 0.248② 0.371⑩ 0.329⑤ 0.367⑨
FIP 2.845④ 2.851⑤ 2.27① 2.90⑦ 3.17⑧ 2.80③ 2.88⑥ 2.61② 4.61⑨ 4.85⑩

 

縦で見ていきましょう。

防御率トップの小島は被長打率1位。被打率3位からの変動が少なかったことが要因です。一方四死球率は高くは6位でした。素晴らしい投球内容の中で四死球の多さは目立ちますが、四死球の関係しない指標ではいい結果が残っており、やはり六大学ナンバーワン投手と言っても過言ではないでしょう。たださらに慎重な攻めが必要なプロ。この先通用するかは速球の質がカギを握るでしょう。

法大を栄冠に導いたルーキー三浦。やはり目立つのは四死球の少なさ。IsoD、B/9でトップに立ちました。三振奪取率もまずまずでK/BBは断トツ。LOB%も堅い法大内野陣に助けられ1位と粘りも発揮しました。その一方でHR/9は東大投手を含めてもワースト。慶大早大に2本ずつと上位との対戦で甘さが露呈した形に。打者に慣れが出てくる来シーズン、これまで通りゾーンの中で勝負できるかが分かれ目になるかもしれません。

同じくルーキーの明大竹田。森下との二枚看板でローテーションを回しました。ほとんどの指標が平均程度とクセのない投球内容。その中で被本塁打数はゼロ。その結果、計算式において被本塁打数が大きく関与するFIPで1位に輝きました。BABIPは高めの数値で、来季は揺り戻しで被打率が良くなる可能性も。気になるポイントは投球回が規定投球回ピッタリと多くはないこと。FIPのみでの高評価はやや早計かもしれません。意外にもリーグ戦未勝利で、まず目標は初白星になるでしょう。

MVP投手慶大髙橋佑。被打率を中心に良い数字が残っており、被OPSは1位になりました。奪三振率は低水準と打たせて取るタイプですが、HR/9が7位と悪い数字に。BABIPやや低めの数値だっただけに揺り戻しには注意したいところ。

春季から存在感のあった川端健。今季は非常に四死球数が多く、一部指標では東大投手陣を含めてもワーストに。その一方被本塁打数ゼロ、IsoPが1位とポテンシャルの高さは発揮しました。ほぼすべての指標で春季を下回り、田中誠が抜けた投手陣を支えきれず。一冬超えてさらに成長できるか。

立大の大エース田中誠はケガの影響で数値はほぼ低水準。なんといっても精密機械と言えるほどの制球力が鳴りを潜めてB/9は7位と大きく数値を下げてしまいました。K/9が1位とやや意外な結果に。もともと三振は取れるタイプではありますが。ケガが治ったラストイヤー特にここ2年間春は素晴らしい数字が残ってるだけに、来シーズン立大が浮上してくる可能性はかなり高いでしょう。

大学ジャパンのエース格、来年の大学生投手NO.1でもある森下暢ですが、今季は明大の調子を表すような結果に。被打率、被出塁率、WHIPでトップと自滅しない安定感があるようにも見えますが、IsoPとHR/9が9位と痛打を許す場面が非常に多かったです。LOB%も本来の投球内容からすると悪すぎで、余りあるポテンシャルを未だに制御できていない印象。BABIPも低く、この防御率でもまだ"マシ"だったかもしれません。来年はエース兼主将。小島や柳裕也(H29卒・現中日)らのようにもう一皮むけられるか、はたまた重荷を背負いきれずに自分を見失ってしまうのか。投手主将という諸刃の剣がどんな結果をもたらすのか、注目です。

法大で2番手の座を守り続けた高田。ただし、数値に現れるように、春以上に実力不足が露呈してしまいました。守備の良い法大内野陣がいながらBABIPがリーグワーストだったことはもちろん運が悪かったこともあるでしょうが、それを考慮しても悪い成績です。ただ被本塁打四死球の少なさ、三振も取れない訳ではないということでFIPは2位。まとまった投手であるのは確かですが何か武器が欲しいというところでしょうか。

東大投手陣はやはり他大学のエース級と比べると大きく劣ってしまいます。それでも小林大はHR/9が6位、BABIPも東大の内野陣をバックにしながら5位と随所に高い能力の片りんを見せています。やはり好不調の差が激しいのが課題ですが、好調の際に打線が爆発すればもしや…という期待感は大いにあります。

 

投手編はこんな感じ。

忙しいので、次回は年明け後でしょう。打者編か、はたまたチーム個別振り返りか。

何を書くかは神のみぞ知るということで。